2013/11/06


?ロシアの観光ビザのいちばんの問題は、訪問する都市だけでなく、宿泊するホテルまであらかじめ決めて、宿泊料金を全額支払ったのちに、そのホテルから「招待状」を出してもらわなければならないことだ。


?ここですでに、「話がおかしい」と思ったひともいるだろう。ビザを取得する前にホテルの宿泊費を支払うのでは、もしビザが下りなかった場合にキャンセルできるかどうかわからない。こうしたトラブルを避けるために、旅行会社は確実に「招待状」を出してくれて、その後の変更にも無理のきくホテルを使うようになる。問答無用でホテルが決まってしまうのは、こうした理由があったのだ。


?しかし不思議なことに、大使館(領事館)でのビザ申請にあたっては、宿泊先の「招待状」が確認されることはない。手続き上は、ホテルの予約をとったロシア国内の旅行会社が“招聘元”となってバウチャーを発行するためで、このバウチャーさえあればビザ申請は受け付けられるのだ。


?インターネットのビザ・サービスでは、この“抜け道”を使って、適当な宿泊先で旅行会社にバウチャーを出させている。書類を申請する際、国名を入力すると、「これまであなたの国の領事部でビザが発行されなかったという報告はありません」という説明文が表示されるが、これは宿泊先の招待状まで確認されないという意味で、きびしく調べられれば、当然、ルール違反だ。


?もっとも、パススポートに添付されるビザには旅行期日と訪問都市しか記載されていない。出入国はもちろん、国内便や長距離鉄道に乗車する際もこのビザを確認されるが、ロシアの旅行会社が発行したバウチャーや、個別のホテルの招待状を見せるよう求められることはない。


?外国人旅行客を受け入れるホテルは、チェックインのときにいったんパスポートを与り、宿泊登録をしなければならない。この手続きは、パスポートの出国書類の裏に宿泊記録を書き込んだり、別途、登録確認書類を発行したりさまざまだが、出国時にこうした記録を確認されることもない。


?昨年から始まった日露ビザ発給簡素化によって、ビジネスマンなどを対象に、90日以内の滞在ビザや3年以内の数次ビザには招待状が不要になった。こうしたビザで宿泊予約する外国人旅行者もいるのだから、ホテル側としては、自分が招待状を出したかどうかにかかわらず、チェックインした客のパスポートで宿泊記録をつくればいいのだ。


?このような現状を考えると、短期の観光ビザにだけホテルの招待状を必須とする現在の制度はまったく意味がない。インターネットや海外の有名ガイドブックで堂々と“抜け道”が紹介されているのも当然なのだ。




- 観光客を拒絶するロシアの不可解なビザ申請[橘玲の世界投資見聞録]|橘玲の世界投資見聞録 | 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン
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