2013/11/04


呉智英:


「はだしのゲン」がね、人気が出てきた時にですね、多くの人が「これは反戦・反核漫画で良い」ってことを言った時にね、そういう単純なもんじゃないと言った著名人が二人いるんですよ。


一人は手塚治虫なんですよ。手塚治虫は流石に「そういう読み方もあるかもしれないけど、私はそうは読まなかった。これは家族の情愛の物語として優れている」っていう言い方をしたんですよ。


これはなかなか鋭い指摘なんですよね。やはり実作者として優れているから。


家族がね、苦難の中からどのように這い上がってね、お互いに励まし合っているのか、という話としても非常によくできてるんですよね。


もう一人は大江健三郎という人で、この人が私はあんまり好きではないんだけどね(笑)、それは置いといてですね、やはり鋭いと思うのはね、


大江健三郎は、「これは民衆の記録である。そういう意味では現代の民話である」という言い方してるんですよね、これも鋭いんですよね。


民衆が体験したこの苦難を、こういう形で残したのが素晴らしい。それは単純に反核メッセージだけではないんですよね。


荻上チキ:


家族の物語と言った時に、手塚治虫さんとその描写ですと


その家族というものが、たとえば同じ血がつながっている親戚だったとしてもあるいはかつてからの幼なじみだったとしても、一旦極限状況になったりすると、自分の食い扶持を守るために追い出すっていうようなシーンもあったりするわけですよね。


だけど、一方で全く無縁の、同じようなトラウマとか記憶を体験をしている人たちが擬似家族として生き残っていく、といったときになにかこうあるべき姿というものが、特定の血のつながりとかに固定されていないというような、そうした変化を色々見せられたと思うんですよね。




- 荻上チキSession22  「はだしのゲンが教えてくれたこと」 2013.08.06 - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=52MRXB7PgrM