僕の大学の同級生にTという男がいるのだが、彼はものすごく真面目なヤツ
だった。
研修医時代も、ずっと遅くまで仕事をしていたし、みんなが「そんなのあわて
て取らなくてもいいよね」と言い合っていた認定医や専門医に、取得条 件を満
たすとすぐ合格していった。天才というよりは、究極の秀才型、というのが周囲
の評価だったように思う。
あるとき、飲み会で、僕はTに尋ねたことがある。
「そんなに真面目に仕事ばっかりして、くたびれない? 僕なんか日常業務だけ
で一杯一杯なのに」
ほろ酔い加減だった彼は、こんなふうに答えてくれた。
「いや〜俺って本当に『めんどくさいこと』が大っ嫌いでさあ……で、考えれば考
えるほど、将来いちばんめんどくさくない方法っていうのは、さっさ と資格を
とれるだけとって、いろんな準備をしておくことなんだよね。資格なんて、後回
しにすればするほど、かえってめんどくさくなってくるだけだ から」
Tはさっさと医局に見切りをつけ、現在は開業医として成功を収めている。
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「ポジティブ」と「ネガティブ」に振り回される人たち - 琥珀色の戯言
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20120406