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「だから言ってるだろう。ぼくはもう努力なんてしたくないんだ」
 
「それが二つ目の勘違い。努力なんてしなくていい」
 
「は?」
 
「だから、努力なんてしないほうがいいんだよ。努力がつらいのは、やりたくないことをやるからだ。やる価値がわからないものを、やらされるからだ。そういう努力なら、やらなくていいよ」
 
無駄な苦労を尊ぶ風潮が、息苦しい社畜文化を作ってきた。
 
「さっき話に出てきたPixivだけど、ランキング上位の常連の人たちってすごいよ。たとえば商業で活躍している人なら、月に何十枚も……人 によっては1日1枚以上のペースで仕事をこなしつつ、たまの休日にもラクガキをしている。描くのをやめられないんだ。当然、誰にでも真似できることじゃな い。誰にも真似できないからこそ、仕事になっている」
 
人よりもたくさん描いているから上達し、上手いからこそ仕事が来て、さらにたくさんの絵を描くことになる。いい循環ができているのだ。
 
「そんな特別な人の例を出されても……」
 
彼は苦笑した。
 
私も苦笑を返す。
 
成功している人を“特別な人”と考えているうちは、その人のようにはなれない。自分と違う人種だと考えているうちは、絶対に成功なんてできない。同じヒトという生き物でありながら、どうしてこんな違いが生まれたのか。そちらに目を向けるべきだ。


- 「そんなの知らないよ」と彼女は - デマこいてんじゃねえ!