1014

“当時は、片想いしている子の部屋に入れてもらえず、電車もなくなって、夜の住宅街、あるいは団地や公園が広漠とつづく学園都市を、眠ることもなく歩き回るハメに何度か陥った。
真夜中の国道を歩いていると、にぎやかなネオンが光っているのが見えた。何のことはない、看板メーカーのショールームだった。人がいないことにがっかりしたような、安心したような不思議な気持ちになった。
 
今でも、いかにも東京らしい、匿名性の高い街の景観を見ると、愛着のような感情がわき起こってくる。無表情な街に、得たいの知れない親密さを感じてしまう。
冷たいビルとビルのすき間に、ベンチの置いてある木の生い茂った静かな一角などを見つけると、陶然とした気持ちになってしまう。”
 
- ■0708■: 550 miles to the Future